ステップワゴンのフロントドアとスライドドアに跨った損傷の修理です。フロントドアとスライドドアに大きな段差が出来ており、かなり強く当たった損傷と思われます。
まずは押し込まれた部分を大まかに粗出しし、前後パネルの高さを合わせていきます。
パネルの高さをある程度合わせたら、パネルを鈑金していきます。
プレスラインもあるので非常に複雑にへこんで変形していますが、高く盛り上がった部分を叩くことで、凹みのテンションを抜いていきます。この修理の理屈はデントリペアと似てますね。
ある程度叩いたところで表から引っ張る為、塗膜を剥離します。
表から引っ張るにはスタッド溶接機で溶接し、スライドさせてストップがかかった時の衝撃で引き出すスライドハンマーという工具を使用します。プレスラインも精密に引き出していきます。
出したい部分を表から引っ張りながら、膨らんでいる部分をたたくことで正常な面を形成していきます。この作業をしっかりと行う事でこの後のパテ作業の効率がグンッとアップします。
器具を溶接するのでどうしても少し焦げるのですが、その部分をしっかりと削り落として、錆など後々の不具合を防止します。
エッヂ出しを行い、修理面と正常面をスロープ状につないでいきます。
スライドドアも同様の工程を経てエッヂ出しを完了し、パテ作業へと移っていきます。
損傷が大きい為、本来であれば厚付けパテ→中間パテ→薄付けパテの順に整えていきますが、パテは極力回数が少ない方が良いので、厚付けパテ→薄付けパテで完了します。
しっかり乾燥させて、後の不具合を防止します。
厚付けパテを研削しています。荒研ぎでは手研ぎに加えてサンダーを使用します。
これで形が出来上がりました。
ペーパーキズや巣穴と呼ばれるピンホールを薄付けパテで埋めて、表面をさらに整えていきます。
これもまたしっかりと乾燥させます。
パテが乾燥したら丁寧に形を整えながら研いでいきます。プレスラインの上は逆アールと言って反り上がった形状なので、形状に合わせてツールを選定して作業します。
プレスラインもキッチリと再現し、パテ作業は完了です。
パテの最終仕上げで残ったピンホールや傷などを専用の材料で補填します。
マスキングをして下地塗装サフェーサーを塗装します。ボディーカラーが黒なので黒色のサフェーサーを使用。下地の色が塗料の使用量や、上塗りの発色にも影響してきます。
鈑金作業完了です。プレスラインもしっかりと再現されています。この後は塗装作業を行います。
仕上り向上のために付属品等を外してから塗装パネルの下地を作ります。細かいスコッチなどを使用して塗装の食いつきを良くします。サフェーサー部も更に平らになるようにしっかりと研ぎ込みます。
サイドスポイラーも同様に作業します。
「塗装ブース」に移動し、塗装用のマスキングを行います。塗装専用のこのブースは、上から下へ空気が流れている事で、埃やチリなどの浮上を予防し、塗装中の付着を抑えます。
サイドスポイラーも塗装スタンドにセットして準備完了!!
当社は「AI調色機」を導入しており、職人とAIのハイブリッドで調色作業を行っております。まずはボカシ剤で全体を馴染ませて、カラーベースを塗っていきます。黒は染まりも良いので、塗りながらボカシも入れていき、カラーベースを決めていきます。
カラーベースを塗り終えたらトップコートクリヤーを塗装します。
いかがですかこのツヤ。「塗装ブース」内は焼付も可能な設備が備わっており、そのまま焼付乾燥させる事が可能です。しっかりと乾燥させることが重要なんです。
乾燥が完了したら、ブースから出して磨き作業を行います。まず、塗装時に混入したブツなどを除去します。ブツは専用カッターやサンドペーパーで除去していきます。
ブツを除去した微部分を中心に、肌調整と最終仕上げを行います。
黒い車はオーロラマークと言われる磨きキズが出やすいので、最終仕上げに異なる動きのポリッシャーを使用してオーロラマークを除去しています。
やわらかいクロスで最終の拭き上げを行うとともに、チェックを行っています。
これで磨き作業が完了しました。いいツヤです。
最期に脱着部品を組み付け、作動確認をして完了。
完成しました。このあと洗車を行い、オーナー様のもとに納車させて頂きます。修理完了したばかりの時はきれいで当たり前ですが、時間が経ってもきれいかどうかは修理工程に左右されます。パテは極力薄く、各工程でしっかり乾燥させる、小さなピンホールなどをキッチリ処理するなどで左右してきます。